2010年2月23日火曜日

裁ち切りまで何マイル?

断ち切りいっぱいに絵を描いて迫力を出すことはよく行われますが、その際絵が足りないことと並んで問題になるのは、裁ち切りでキャラの顔やフキダシ、場合によっては文字まで切れてしまうことです。ということで、今回は、前回の漫画に写植を貼る: 裁ち落としまで何マイル?の続きです。

そもそもどうして仕上がり寸法で3mmの裁ち落とし領域が必要なのかといえば、印刷から製本、裁断のプロセスでズレが発生する可能性があるためです。そこでそのマージンとして3mmを許容しているのですが、実際は3mmもずれると印刷所は大目玉を食らいます。とはいえ、一応このズレを考慮して原稿は作成される必要があります。[1]

さて、印刷段階で3mmずれるとなると、断ち切れてしまっては困る要素は最低3mm、できれば3mmずれた段階でも断ち切りから余裕があるように仕上がり寸法で5mm内側に置いておくのがベストです。前回の記事を見ればわかるとおり、仕上がり寸法で5mmということは雑誌や単行本の判型によって位置は変わってくるとことになります。この位置を、前回と同じく原稿時点での基準枠からの距離で示してみます。

  • 新書判で、天 20mm、地 18mm、左右 3.5mm
  • B6判単行本で、天 15mm、地 14mm、左右 12mm
  • B5版雑誌で、天 14mm、地 12mm、左右 10mm

意外にマージンがないのがおわかりでしょうか。特に新書判での左右の狭さは特筆すべきで、雑誌掲載時に断ち切りいっぱいに描かれていたキャラは、完全に見切れてしまいます。[2]

こうした状況下で実際に単行本の編集をすると、文字やキャラが断ち切り近くに入ってしまうので、内側に移動させたり、場合によっては縮小率を変えて、原稿を小さくして文字を裁ち切りから5mm以上離れるようにしなければいけません。ところがたいていの場合は縮小すると、絵柄が裁ち落としいっぱいを満たせなくなったりします。端から見るとどうでもいいようなことですが、単行本の編集ではこの作業が結構労力が大きくて大変だったりします。読者の皆さんが単行本を見て、写植の位置が裁ち切りから妙に離れていたりしたら、ああ単行本の編集で苦労したのだな、と思って下さい。もっともそういう苦労の跡を見せるのは品質が悪い証拠なのですけれど。

[1]逆に言うと紙に印刷するからこそズレを見込まなければいけないわけで、最初から電子出版で発行するのであれば、こうしたことに気を配る必要は全くなくなります。

[2]ここで記述しているのは平綴じの雑誌です。中綴じの雑誌は表紙・裏表紙に近いページと中央よりのページで小口までの長さが変わってきますので、もっと小口側に余裕を見て、内側までに要素を収めておく必要があります。



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